万引きと詐欺

yamatakabou

何年か前にアップルハウスで
事件が起こった。

「妻が最近、太ってしまってね。
服をプレゼントしたいのだけれど、
選んでくれないか?」

初老のステキな紳士が
店頭に現れた。

あれこれ選びながらも、
紳士は身幅をとても気になさる。

しばらくして、
「ありがとう。妻と相談して
またくるよ」

そう言い残して店頭を去った。

時間はお昼休憩の最中だったので
接客したのはスタッフひとり。

やがてもうひとりのスタッフが
休憩から戻り、
最初のスタッフが
交代で休憩に入った。

すると、その紳士が現れた。

「これを買ったんだけれど、
気に入らないんだ。返金して欲しい」

本来、レシートと納得できる理由が
なければ返金はしない。

ところが、紳士の態度が
あまりにも堂々としていて、
尚且つ、列車の時間に間に合わないと
急かすので、ついレジから
お金を出して渡してしまった。

やがて先のスタッフが
休憩から戻り、事の顛末を確かめた。

返金した商品は
先のスタッフと品選びをしていた時に
万引きされたもので、
紳士はスタッフの交代を確かめて、
店頭に来て現金に交換した次第。

ありえないよね、と
その後、各店に返品の
手順を徹底していたのだが、
先刻、別のアップルハウスに
件の紳士から電話があった。

「妻が最近、太ってね。おたくの商品を
プレゼントしたいのだけれど、
明日、店長はいるかな?」

声に特徴がある方だった。

ビル営業部に事件が起こったときの
応援を頼むと同時に、
アップルハウス全店に
注意連絡をする。

紳士


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