餅つき会も終わり、
私は東京に
戻る準備をする。
「明日も来てくれるよね?」
母が言う。
「いや、3日まで来れないよ、
東京に戻るから」
「じゃあ、私はひとりでお正月を
迎えるの?やだやあ」
↑
ひとりじゃないじゃん。
施設の職員さんも、
みんなもいるじゃん。
「けいこも正月ぐらい
のんびりすれば
いいのに。
一緒にパチンコに
行こうと思っていたのに。
約束したデパートにも
行ってないよね。」
↑
だって、従姉が亡くなって、
それどころじゃ
なかったでしょ。
びきびきっ。
「私は私の予定があるの」
「ススムとマコトは
どうなっているの?
けいこは長女だから、
弟たちに連絡をして、
私をひとりにしないように
しなくちゃだめだよ」
↑
お母さん、私は60を過ぎて、
弟たちも年を重ねて、
子供の時のように
力でねじ伏せられないの。
それに
すでにふたりの弟に
連絡をとって、ふたりとも
浜松には来ないって言うから、
お母さんのところに
来るだけのために
私は1日使っているんだよ。
がぁっーと
言いたかったけれど、
我慢した。
「もう一回、ススムとマコトに
連絡をとって、こっちに来るように
言っておいてやあ」
背中に母の言葉が
のしかかってきた。
「自分で電話をすれば?
そのために携帯電話を
渡してあるんだから」
母の顔を見ないで
言い放ってドアを閉めた。
怒りとか
悲しみとか
後悔とか
そんな負の感情が
ごちゃまぜになって
身体の芯から
湧きあがってきた。
母が元気なことだけは
確かだから、
善しとすべきことだね。