31 おばあちゃんの恋
多賀加代
「真実惚れたひとのことを思うと 今でも涙が出てきます」
加代さんは生涯 結婚をしなかったけれど
心底 好きな人と生涯を共にした
妾を何人も囲っていた
遊び人の心底好きな人との間に
男の子が産まれた
子どもは正妻に引き取られ
正妻の子どもとして
戸籍に載った
その後
加代さんは 心底好きな人と共に
上京して 籍が入っていないまま
生活をして やがて 女の子が産まれた
そうして 籍が入らないまま
好きな人は逝き
加代さんは娘と二人暮らしになった
その娘が
結婚して 家を出ると
加代さんは一人暮らしになった
好きな人と一緒にいられることが
一番 自然で 安らぐこと
子どもは愛し合うふたりの 過程で
自然にできたものだから
子どもに対する執着はない
それより
あの人がどれだけ
私に優しくて どんな風に愛してくれたかが
私には 重要なの
おばあちゃんの「コイバナ」は
いつもでも続く