帰路の車の中で
運転手は静かに語った
私はここには戻りたくありませんでした
私はダウハの収容所に送られた
最後のひとりだったんです
汽車がダウハに着いた時
アメリカ軍が来て
全員を下しました
運転手さんたちは収容所に入らずに
ミュンヘンまで死の行進を始めた
その途中 ドイツ軍は半数を死に追いやった
かろうじてミュンヘンに辿りついたものだけが
アメリカ軍に救われた
だから自分がガス室の手前まで生きながら
こうして生きながらえているのが不思議なのだと