会社までの坂道を歩いていたら、
前方にホームレス風の人がいて、
道行く人に声をかけていた。
↑
誰も取り合っていない。
近づいちゃうよ、
声かけられちゃうよ…。
そう思ったけれど、
逃げ道はない。
あ、来ちゃった。
「青森から来たんだけれど
もう一週間飯を食べてない」
そう言った。
言葉遣いに
東北のイントネーションはない。
その割には痩せこけていないな。
でもね、とバッグの中から
お弁当を取り出して渡した。
「食べ物じゃなくて
500円か1000円ください」
むきっ!
返事の代わりに弁当箱を
さらに相手に押しつけて
ずんずん歩いた。
歩きながら、
あっ!お箸を付けていなかったと
思い出した。