23 子供の死 古宿敦子

 

23 子供の死

古宿敦子

「もっと抱いてやればよかった……」

 

 

敦子さんに三人目の赤ちゃんができた

生活は苦しかったけれど

産むことを決めた

 

生活のために家事と仕事を

両立させなかったから

三人目の赤ちゃんは

ほとんどみることができなかった

 

着るもがお下がりばかりでも

仕方なかった

 

その子供が二歳の時

流行性髄膜炎の電撃型という

まれにみる伝染病で

一日と少しで死んでしまった

 

・・・ああすればよかった

・・・こうすればよかった

 

悲しみでいっぱいだった心に

ぽかんと穴が空いて

敦子さんは四人目の子どもを産むことにする

 

でも

四人目の子どもは

死んでしまった子供ではない

 

敦子さんは

たった二歳で人生を駆け抜けていった

二歳のままの子どもに

今でも

私がお母さんだよと心の穴に話しかける


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