29 おばあちゃんの孤独
坂本いく
「最後の最後は福祉にお願いしてでも」
いくさんは
3人の子どもを産んだ
嫁いだ長女
同居した長男
独立した次男
ご主人を看取った後も
長男夫婦と暮らしていたが
長男夫婦は離婚し
長男は単身 東京へ 旅立った
いくさんは次男夫婦と暮らしたいと考えたが
断られた
だから ひとり 故郷に戻り
小さな家の玄関で
よろずやを営みながら
ひとり暮らしをしている
一日一日を過ごしながらも
いくさんは
誰かと一緒に暮らしたいと願うけれど
叶わない
・・・私 いろんなことを
我慢して言わなかったからかな
言えないからかなと
時々 思う
自分の気持ちを言えないまま
いくさんはよろずやを営み
最後は福祉の世話になるのかなあと
考えながらも
誰かと暮らしたいと思っている