フィリピンで日本軍の
捕虜になった彼らは
暑さと喉の渇きと
なにより食べ物に飢えていた
だから
生きている動物は
なんでも殺して食べていた
あるとき
猫を捕まえて
みんなで食べようとしていたら
ひとりの少年兵が言った
「僕にもひときれくれないか」
彼らは答えた
「いいかい 坊や
家に帰ってこういうんだぜ
猫を繰っている人を見たって
お前にはひと切れもやらないよ」