たいていの人が食べ物をくれた
盗んだものを食べたこともあった
ある時 ひとりのドイツ兵が
一切れのパンとハーモニカをくれた
彼は兵隊のなかではきわめて小柄で
すぐに泣く兵隊だった
僕は戦争をしたくてキエフに
来たんじゃない
連れてこられたんだ
人を殺すなんて僕にはできないと彼は言った
もらったパンをかじりながら
ヴィタリさんはハーモニカを吹いた
戦争が始まる前と
同じ音がした
やがてヴイタリさんは
キエフの街でお母さんをみつけた