以下は
引用です。
未見の我
安積得也
晝(ひる)なほ暗(くら)き
大森林(だいしんりん)の
何千億(なんぜんおく)の
樫(かし)の葉(は)から
一番(ばん)よく似(に)た
二枚(まい)を擇(と)つて
較(くら)べて見(み)給(たま)へ
不思議(ふしぎ)ですねえ
一枚(まい)だって
眞(まっ)たく同(おな)じものは
無(な)いのだから
植物學者(しょくぶつがくしゃ)の
語(かた)る事(じ)實(じつ)が
強(つよ)い強(つよ)い暗示(あんじ)を
人間(にんげん)の個(こ)性(せい)の
問題(もんだい)に投(な)げかける
思(おも)へば
愕(おどろ)かずには
ゐられない
人間(にんげん)の一人(り)一人(り)が
その人(ひと)でなければ
持(も)ってゐない特質(とくしつ)を
造(ぞう)化(くわ)の主(ぬし)から
授(さず)かってゐるとは
人(ひと)皆(みな)英雄(えいゆう)!
そうだ
内(うち)に隠(かく)れて
見(み)えないけれども
現在(いま)こそ
内(うち)に眠(ねむ)り
底(そこ)に潜(ひそ)んで
自分(じぶん)にも他人(たにん)にも
発(わ)見(か)らないけれども
この弱(じゃく)小(せう)な
我(われ)の中(なか)にこそ
『未見(みけん)の我(われ)』の
偉大(いだい)な姿(すがた)が
隠れて(かくれて)いるのだ
現(げん)在(ざい)の我(われ)とは
比(ひ)較(かく)にもならぬ
強(つよ)く正(ただ)しく
温(あたた)かく淸(きよ)い
偉(い)大(だい)なる
我(われ)が潜(ひそ)んでゐるのだ
オ(、)芽出度(、、、)い豫(よ)想(さう)?
誇(こ)大(だい)妄(もう)想(そう)?
嘲(わ)笑(ら)ふ者(もの)をして
嘲(わ)笑(ら)はしめよ
ほやほやの人間(にんげん)は
靜(しずか)に信(しん)ずる
『未(み)見(けん)の我(われ)』よ
善(ぜん)良(りょう)なれ
『未(み)見(けん)の我(われ)』よ
偉(い)大(だい)なれ
明日(あす)は今(け)日(ふ)よりも
完(くわん)全(ぜん)なれ
明(みやう)年(ねん)は
今(こん)年(ねん)よりも
更(さら)に勇(ゆう)壮(さう)にして
獨(どく)立(りつ)にして
謙(けん)遜(そん)なれ
友(とも)よ
歎(なげ)くを止(や)めよ
現(げん)在(ざい)の『我(われ)』の
貧(ひん)弱(じゃく)さに
失(しつ)望(ぼう)する勿(なか)れ
若(わか)き我(われ)等(ら)こそ
『(「)我(われ)』(」)の中(なか)に
『(「)未見(みけん)の我(われ)』(」)を
確信(かくしん)して
貴(たっと)い
発(はつ)現(げん)の努(ど)力(りょく)を
楽(たの)しもうではないか
↑
発現の努力って、
重い
言葉だ。