「私、夢があるだよ」
昨日、ふいに
母が言った。
刺身かな?
でも、今日は無理。
ドキドキ。
「死ぬ前に船の旅行に
もう1回行きたいの」
えっ!
確かに母は
元気な頃、
毎年、船旅行に
出かけていた。
↑
豪華客船による、
1週間前後の旅だ。
たぶん、
国内のコースは全部、
韓国に行くコースは1回。
その度に、
「今年が最後」だと、
言ったので、
まあ、仕方ないと
子供たち3人が
決して安くない
ツアー費用を
出していた。
「うーん、もうひとりで行けないでしょ。
インスリンを打たないと
いけないんだもの」
「だから、頼んでいんじゃない。
一緒に行こうよ。親孝行したくないの?
けいこも働き詰めだから、
たまにはのんびりしなくっちゃねえ」
え
え
え
私、今も
今までも、
親孝行してきた
つもりだったけど。
違う?
それに私が働いているから、
こうしてお母さんのところに来たり、
できているんだけど。